静けさの中で生きる力|長田弘「空の下」とシューマン「献呈」

年の始まり、さまざまなことが起きています。

神様って、いるんだろうか。

そんなふうに思った方もいるのではないでしょうか。

人はあまりにも無力で

いったい何ができるのか。

何かあると読み返す、長田弘さんの詩「空の下」からの抜粋です。


黙る。そして、静けさを集める。

こころの籠を、静けさで一杯にする。

そうやって、時間をきれいにする。

独りでいることができなくてはできない。

静けさのなかには、ひとの

語ることのできない意味がある。

言葉をもたないものらが語る言葉がある。

独りがいることができなくてはいけない。


独りでいることができなくてはできない。

空の青さが語る。賢いクモが語る。

記憶が語る。懐かしい死者たちが語る。

何物もけっして無くなってしまわない。

独りでいることができなくてはいけない。

この世はうつくしいと言えないかもしれない。

幼い時には、しかしわからなかった。

この世には、独りでいることができて、

初めてできることがある。ひとは

祈ることができるのだ。


私は特別な信仰を持っているわけではありません。

でも、人が発する祈りの力は感じます。

祈りが状況をよくできるわけでは決してないけれども

自分の静けさの中で、発する力のようなもの

それは、日々を生きていく力。

何ができるか、そもそも、わたしに何かできるのか

常にある問いかけですが

今、私にできることは

きっといままでにしてきたことの中にある。

そう信じ、祈りたい。

あなたが心を静かにし、自分の生きる力を信じられますように。