香りの記憶

だいぶ春を感じることが多くなりました。

寒いのが苦手なので、寒さが緩むのはとても嬉しい。でも、春へと動くときの、なんというか、ものすごいエネルギーみたいなものに、負けてしまいそうに思うこともあります。

ああ、始まっちゃう。

まだ準備できていないのに。

昨日まで冬だったのに。

でも素敵な季節の、そして日本ならではですが、新年度の始まりですから

ワクワク、ドキドキ、フレッシュな気持ちに早めにシフトさせていきたいものです。

さて。

五感は思い出と密接で、例えば良く聴いていた歌を聴くとその当時を思い出すなどはよくあることです。

その頃の気持ち、感情、想い。フラッシュバックのように目の前にやってきます。

もともと、春は膨大なことが起きるので、

「ああ、春だなあ」と感じるとともに、複雑に絡み合った懐かしい想いが溢れ出すこともあるでしょう。

学生の頃、実験課題を立てる授業があって(実際にはやらない)、アロマオイルを使って嗅覚の記憶がどれくらい作用するか、みたいなことを計画したことがあります。(残念ながら、その詳細記憶は私から消えてしまった。)

我が家には、アロマオイルを数種類だけ常備していて、

大雑把に使っています。(きちんと使ってくださいね。)

久しぶりに、スプレーにしてシュッシュッとしてみたんです。

ユーカリと、ラバンサラ。抗菌作用があるとされているオイルです。

いい香り。

でも、心がざわつきます。

感じているのはいい想いじゃない。

去年の春、緊急事態宣言でステイホームが強く言われていた頃。

消毒用のアルコールが、マスクが手に入れにくかった頃。

よく、うちの中で使っていた香りでした。

良くわからない、大きな不安。渦中にいるとじっくりと感じられなかったりしますが

今感じ返してみると、そうとうなストレスだったんだな。

一年がたとうとしている今も、不安な状況は続いていますが、以前よりもこれからへの対策も、それに伴う覚悟もできたように思います。

きっとこれからも、これらを全くなしにはできないだろうし、

いつだって、楽しく、嬉しく生きていきたい。

そんなわけで、この香問題をどうしようかなと考えたわけですが

思い出したのが、「未来は過去を変える」という言葉です。

平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」に出てくる大切な言葉。

小説の内容とは、かけ離れますが

この香を、これから楽しい時間の中で使っていたら、感じ方が変わるかも知れない。

これからの私の生き方によって、この香の思い出は変わるんではないかしらと思うのです。

生きていれば、「今」はずっとずっと、変わっていきます。その「今」をどういう想いの中でいるかによって、過去も変わっていくのではないでしょうか。

先日、大きな地震がありました。

実際に大きく揺れた方、ニュースを見た方、その人それぞれが、もしかしたら心がざわつき、不安な気持ちを思い出したかも知れない。

でも、わたしたちは、学ぶことができる。

その不安から、学び、対策をとり、

「今」をどうにか、気持ちよく過ごすことを選択することができる。

過去に起きた出来事は変わらない。でも、それを思い出すあなたが「今」をどう生きているかで、そしてこれからを、どう生きるかで

包まれる想いが変わってくるのかも知れません。

あなたの変化する過去を、心から応援しています。