自分を探しに旅に出なくてもいい

旅は大好きです。けれども、

「自分を探しに旅にでよ。」

みたいな文句があまり好きではありません。

旅に出たかったら、出たらいい。

そもそも、自分は探すものではない。

だって、ここにいるでしょ。

経験を積むという意味では、旅は有効です。

知らない場所。知らない乗り物。知らない食べ物。

その経験が、人生を豊かにすることは充分にあります。

考えたり、選択したり、失敗したり。

旅に出れば、普段の生活よりも、実りのあることが訪れることも多いでしょう。

でも。

その目的は決して

本当の自分に出会う、でもなければ

人のやさしさにふれる、でもない。

先日、病院の待合室で読んだ雑誌には、

一人旅のすすめが書かれていました。

「泣くために、ひとり旅」

この病院に来た人が、不安を抱えてここに座り、ふと手にして読んだら

どう思うかしら。

例えば自分の大切な人が大変な病気であるとき。

泣くために、ひとり、旅にでるかしら。

旅に出たい人は、出たらいい。

けれども。

旅に出ないと、知らない土地に出向かないと、涙を流せないのなら

その生活のほうを

どうにかしないといけないのだと思う。

遠いところに行かないと、ひとのやさしさに気付けないのなら

今の環境を見直さなければいけないのだと思う。

人は、「気づく」ことが、案外と苦手なのかもしれません。

でもね。

その時に必要な「気づき」は、

必ずあなたのすぐそばにあるのです。

大丈夫。

遠くへ行かなくても、あなたの感情が教えてくれます。

悲しみなさい。楽しみなさい。嘆きなさい。喜びなさい。

それが、本当の自分なのだと思いますよ。