だいぶ春らしくなってきました。
この移ろう時期は、
「さようなら」 と 「はじめまして」 が入り混じって
独特のこころの動きがあるように思います。
ジャズの曲は、あまり感情を一方向にはしません。悲しい曲を、悲しいばかりでは演奏しないし、楽しい曲もしかり。
フラメンコは、ストレートに感情を表現するものが多いですが、ジャズは、
例えば、今悲しく落ち込んでいる人にも、嬉しくて幸せを感じている人にも同じように響くような。
ちょうどいい、中間のバランスのところにいるような。
はじめてなのに、どこか懐かしく、でももう戻れなく、たまらなく切なくて、愛おしいような。
「愛するポーギー」
この曲を初めて聴いたのは、キース・ジャレットのソロのピアノでした。
病から回復し、自宅で録音されたという「The Melody At Night ,With You」という美しいCDの1曲目にあります。そのCDのブックレットを見開くと、これまた美しいことばが書いてあります。
For Rose Anne,Who heard the music ,Then gave it back to me.
私の音楽を聴き、私のもとに返してくれた、ローズアンへ。
彼にとって、音楽がどれほど大事なのか、療養中の不安や焦り、そして奥さんのローズアンの支え、演奏再開の喜びなどが溢れ出す1枚です。
さて。ポーギー。
この曲は、ジョージ・ガーシュインが創った、「ポーギーとベス」というオペラの曲で、ポーギー(男性)とベス(女性)が語るように歌われるそうです。歌詞の内容がちょっと複雑なのですが、ポーギーはベスを心から愛している。ベスはその想いを受け入れたい。けれども自分の気持ちを信じきれない。というようなところなのかな。
そんなわけで歌もあるのですが、今回はピアノで。
こちらは、大好きなビル・エバンスのピアノソロ。
春には、いろんなことが動き始めますが、そんな時だからこそ、じっくり、じっくり、今を感じてみるのもいいような気がします。進むことばかりでなく、立ち止まったり、振り返ったり、回り道したり。いろんな気持ちが入り混じる、そういう時間がとても愛おしく感じ、また、先に進むのにも必要なのだと思います。
こころが置いてきぼりでは、進みづらいから。
あなたに訪れる春をこころから応援しています。