東日本大震災のあった年の大晦日に、宮城県東松島市の仮設住宅にボランティアで行っていました。
公民館のような場所をお借りして、屋台のように組み立てたテントで、お蕎麦や、甘酒、お洋服のプレゼントなどを配ります。室内では、皆さんで楽しめるようなステージがありました。
既に近くの大型スーパーは営業していたし、日常が戻ってきたんだなと、想いながら
私は現地の子供たちと綿あめを作っていました。
自治会長さんが、カキをたくさん用意してくださって、私のそばのコンロで焼いてくれました。
綿あめを作り終わって、会長さんのそばに座っていたら、
カキを焼きながら、静かにお話されたのです。
一瞬、何のことだかわからなかった。
それくらい、静かで穏やかな口調でした。
地震はそんなひどくなかったんだよ。金魚が水槽から飛び出るのを心配したくらい。
でも、孫がね。
バスケットやってたんだ。
そうして、焼きあがったカキを、ぽんと渡してくれました。
震災から、10年。
7歳のむすめは震災を知りません。今はただ、恐怖しかないようで、どうやって伝えていくか悩んでいるところです。
正しく恐れること、対策をとること
それももちろん、大切だけれど
ひとには、ことばにできない深い想いがあるということと、
そばにいる人が、それに気づくことができるということを
少しずつ、教えていけたらなと思います。
長田弘さんの「花をもって、会いにいゆく」
という詩の抜粋です。
死ではなく、その人が
じぶんのなかにのこしていった
たしかな記憶を、わたしは信じる。
ことばって、何だと思う?
けっしてことばにできない思いが、
ここにあると指さすのが、ことばだ。
春の木々の
枝々が競いあって、
霞む空をつかもうとしている。
春の日、あなたに会いにゆく。
きれいな水と、
きれいな花を、手に持って。
目覚めたあなたの明日が、輝かしくありますように。